酸蝕症(歯が酸で溶ける)

アイスを食べて歯がしみる女性

なるべく削らない治療

Dental erosion

酸蝕症「ワインで歯が溶ける」って、本当ですか?

酸っぱい飲み物や食べ物が、歯の表面を少しずつ溶かす病気です。虫歯とも歯周病とも違い、毎日きちんと歯をみがいている方にも起こります。このページで、原因・セルフチェック・削らずに治す方法をまとめてご案内します。

健康に気をつけている人ほど、
気づかないうちに進むことがあります

「最近、歯がしみるんです。虫歯じゃないみたいなんですが」――そんなご相談をいただくことがあります。
ワインを楽しむ、スポーツドリンクを飲む、ビタミンCのサプリを毎日とる、フルーツや酢の物をよく食べる。体のためのこうした習慣が、歯の表面を少しずつ溶かしていることがあります。

Case

当院の症例

20代女性 右下の奥歯3本の噛む面が、酸で溶けてくぼんでいた方の症例です。溶けたところを削らずに、ダイレクトボンディングで噛む面の形を足し戻しました。

治療後:ダイレクトボンディングで噛む面の形を足し戻した右下の奥歯 治療前:右下の奥歯の噛む面が溶けてくぼみ、黄色い象牙質が見えている 治療前治療後
写真を左右になぞると、治療前と治療後を見比べられます
どんな状態だったか
右下の奥歯3本(前から4・5・6番目)の噛む面が酸で溶けてくぼみ、内側の黄色い象牙質が見えていました
治療内容
自費のダイレクトボンディング(右下の前から4・5・6番目の3本。小臼歯2本・大臼歯1本)
治療期間・回数
1か月・通院3回
費用(税込)
286,000円(3本分)
主なリスク
天然の歯より着色しやすく、年月とともに変色することがあります。強い力で欠けたり外れたりすることがあります。治療後に一時的にしみることがあります。酸っぱい飲食物をとる習慣が続くと、まわりの歯がまた溶けることがあります。

治療の結果には個人差があります。

What is erosion

歯が「酸で溶ける」とは

前歯の表面のエナメル質の図

酸蝕症(さんしょくしょう)は、酸性の飲み物や食べ物が、歯の表面のエナメル質を溶かしてしまう状態です。

虫歯は、口の中の細菌が出す酸で歯が溶けます。歯周病は、細菌が歯ぐきや骨をこわします。酸蝕症には細菌が関わりません。飲食物の酸が、直接、歯を溶かしていきます。だから、歯みがきをきちんとしている方にも起こります。

Acidic food

酸蝕症は、こんな飲食の習慣から

酸蝕症の原因になるのは、酸っぱい(pH が低い)飲み物や食べ物です。一般に、pH 5.5 より低いものは、歯のエナメル質を溶かし始めると言われています。

  • 白ワインのグラス

    ワイン

    白ワインは特に酸っぱく、口に含んでゆっくり味わうと、酸が長い時間歯にふれます。

  • グレープフルーツの入った炭酸の飲み物

    炭酸飲料・柑橘のドリンク

    炭酸そのものも、柑橘の果汁も酸性です。氷を入れて、少しずつ長く飲むときは注意が必要です。

  • スポーツドリンクのボトル

    スポーツドリンク

    運動中や部活のあとに、少しずつ何度も飲むと、歯が酸にふれる時間が長くなります。

  • レモンとビタミンCのサプリ

    ビタミンC・黒酢・酢の物

    体のために毎日とるものほど、回数が多くなりがちです。噛んだりなめたりするサプリは特に注意します。

飲み物・食べ物の、おおよその pH(数字が小さいほど酸っぱい)

歯が溶け始める目安 pH 5.5

  • 柑橘類(レモン・グレープフルーツ)2.0〜3.5
  • 炭酸飲料(コーラ・サイダー)2.5〜3.5
  • 酢の物・ドレッシング2.5〜3.5
  • ビタミンC・黒酢・クエン酸2.5〜3.5
  • 白ワイン3.0 前後
  • 赤ワイン3.4 前後
  • スポーツドリンク3.5 前後
  • ヨーグルト4.0 前後
  • 水(くらべるため)7.0 前後

234567

pH は製品や種類によって違います。おおよその目安としてご覧ください。

これらを毎日、何度も、長い時間口に含んでいると、エナメル質が少しずつ溶けていきます。
やめる必要はありません。「飲み方・食べ方」と「そのあとのケア」を少し工夫するだけで、歯への負担を減らせます。

Progress

進むと、何が起こるか

  • はじめ:しみる

    エナメル質が薄くなり、その下の象牙質が透けてきます。冷たいもの・甘いものでしみやすくなります。「ただの知覚過敏」と思って、そのままにしやすい時期です。

  • なかごろ:歯の形が変わる

    前歯の先が透けたり、薄くなって欠けたりします。奥歯の噛む面が平らになり、丸みを帯びてきます。「年をとって歯が短くなった」と感じる方の中には、酸蝕症が進んでいる方もいます。

  • 進むと:噛むと痛む・欠ける

    エナメル質がほとんどなくなり、象牙質がむき出しになります。温かいものでもしみる、噛むと痛む、歯が欠ける。神経まで届くと、強い痛みが出ます。

酸蝕症は、虫歯のように「ある日突然痛くなる」病気ではなく、何年もかけてゆっくり進みます。だから、気づいたときには進んでいることが少なくありません。

Wine

ワインがお好きな方に
よくあること

赤ワインを味わう女性

ご自宅で、夕食と一緒にワインを楽しむ。それ自体は、まったく問題ありません。気をつけたいのは、次のような習慣が何年も続くことです。

  • ワインを口に含んで、ゆっくり味わう(酸が長い時間、歯にふれる)
  • 飲んだあと、すぐに歯をみがく(酸でやわらかくなった表面をこすってしまう)
  • 寝る前にも、ちびちび飲む

前歯の裏側が薄くなる、奥歯の噛む面が平らになる、前歯の先が透けて欠けやすくなる――こうした変化は、こうした習慣の積み重ねで起こります。「ワインをやめる」のではなく、「楽しみながら、歯を守る飲み方」を一緒に考えます。

セルフチェックで確かめる

Causes

「しみる」原因は、
ひとつではありません

歯がしみて口元に手を当てる男性

冷たい水や歯みがきでしみると、「知覚過敏かな」と思いがちです。けれど、同じ「しみる」でも、原因によって、合う対処はまったく違います。

見た目では区別がつきにくく、ご自分で決めつけると、本当の原因を見逃すことがあります。

  • 知覚過敏

    エナメル質が薄くなったり、歯ぐきが下がったりして、象牙質が刺激を受けやすくなっている。

  • 酸蝕症

    エナメル質そのものが、酸で溶けて失われている。

  • 虫歯

    歯に穴があき、神経に近づいている。

  • 歯のひび

    歯に細かいひびが入っている。

  • 歯ぎしり・食いしばり

    強い力で、歯がすり減っている。

「いつ」「どこが」しみるかが、手がかりになります。

考えられる原因起こりやすいしみ方
知覚過敏特定の1〜2本がしみる。歯と歯ぐきの境目がしみやすい。冷たいものをやめると、すぐおさまる
酸蝕症何本もの歯が全体的にしみる。前歯にも奥歯にも出る。酸っぱいものをとったあとに強くなる。知覚過敏用の歯みがき粉では、あまり変わらない。何か月〜何年かけて、少しずつ強くなる
虫歯・歯のひび1本だけがはっきり痛い。甘いものでズキッとする。噛むと、ある向きで痛む。刺激をやめても、しばらく痛みが続く

この違いは、ご自分では見分けきれないことが多いです。お口の中を見て、レントゲンなども使って確かめます。

Self-check

酸蝕症セルフチェック

グレープフルーツやオレンジの輪切り

酸蝕症のきっかけは、毎日の飲み物・食べ物にかくれています。体に良いと思ってとっているものほど、回数が多くなりがちです。

飲食の習慣と、鏡で見たお口のようすについて、当てはまるものに印をつけてみてください。押すと印がつき、下で数を数えます。

飲み物

食べ物・サプリメント

鏡で見る:前歯

鏡で見る:奥歯・全体

印をつけた数:0 個

  • 0〜3個:酸蝕症の心配は少なめです。念のため、定期検診で確かめましょう
  • 4〜7個:酸蝕症が始まっているかもしれません。早めのご相談をおすすめします
  • 8個以上:酸蝕症が進んでいるかもしれません。一度、お口を診せてください

このチェックは、診断ではありません。目安としてお使いください。

Examination

来院されたら、
こうして確かめます

拡大ルーペで歯を診る院長

酸蝕症かどうかは、見た目だけでは決められません。いくつかの検査を組み合わせて、今の状態を確かめます。

  • お口の中の写真:歯の表面がどれだけ溶けているかを記録します
  • 拡大ルーペ(サージテル社の拡大鏡):歯の表面の細かい変化を見ます
  • レントゲン:歯の内側の状態を確かめます
  • 唾液検査:酸を中和する唾液の力を調べます
  • 飲食の習慣のお話:原因を一緒に探します

結果をもとに、飲食の習慣とケアのアドバイスをし、必要に応じてダイレクトボンディングで足し戻す治療をご提案します。

Treatment

酸蝕症は「削る」ではなく
「足す」で治す

拡大ルーペをつけて治療する院長

虫歯の治療は「悪いところを削って、詰める」治療です。酸蝕症の歯には、次のような特徴があります。

  • 虫歯がない:細菌に感染したところがないので、削る必要がもともとない
  • エナメル質が減っている:酸で溶けたり欠けたりして、量が少なくなっている
  • 残っているところは健康:内側の象牙質や神経は、まだ守られている

そこで、溶けて薄くなったところに、歯の色の樹脂(コンポジットレジン)を直接盛り足して形を戻す――ダイレクトボンディングで「足し戻す」方法をご提案しています。

ダイレクトボンディングの良いところ

  • 削る量をできるだけ少なく

    失われたところに、コンポジットレジンを直接盛り足します。かぶせ物や銀歯の詰め物と違い、健康な歯を大きく削らずに済みます。

  • 神経を残しやすい

    溶けて薄くなったところを足し戻して、内側の象牙質と神経を守ります。

  • 通院の回数が少なめ

    歯型をとって技工所で作る工程がないので、かぶせ物より少ない回数で済むことが多いです。

  • 歯になじむ色と形

    透明感や色の違う樹脂を重ねて、ご自分の歯になじむ色と形に仕上げます。

Patterns

進み方に合わせた、
3つの進め方

  • はじめ:前歯の先が透ける程度

    前歯の先や裏側に、薄く足します。透明感を戻し、エナメル質の役わりを補います。

  • なかごろ:何本もの歯がしみる

    前歯の何本か、または奥歯の噛む面を補強します。噛み合わせを確かめながら、何回かに分けて進めます。

  • 進んでいる:噛み合わせ全体の見直しが必要

    歯が大きく減り、噛み合わせの高さまで失われている場合は、お口全体の計画を立てます。何本かの歯にダイレクトボンディングで樹脂を足して、噛み合わせの高さを戻す治療をしています。

当院の症例を見る

Fit

向いている酸蝕症・
難しい酸蝕症

すべての酸蝕症が、ダイレクトボンディングだけで治せるわけではありません。正直にお伝えします。

向いているSuitable

  • はじめ〜なかごろの酸蝕症
  • 残っているエナメル質に、まだ厚みがある
  • 神経まで傷んでいない
  • 歯ぎしり・食いしばりが強すぎない
  • 飲食の習慣を見直すお気持ちがある

これだけでは難しいOther options

  • 歯の半分以上が失われている
  • 強い歯ぎしりがあり、すぐに欠けるおそれがある
  • 虫歯もある(虫歯のところは削る必要がある)
  • 噛み合わせの高さが大きく失われている

難しい場合は、セラミックの詰め物・かぶせ物との組み合わせや、寝るときのマウスピース(ナイトガード)の併用などをご提案します。

Aftercare

治療のあとが、
本当のスタート

ゴムのシートで歯を囲んで乾いた状態を保つ治療

原因の飲食の習慣が変わらなければ、足し戻したところのまわりが、また溶けてしまいます。治療と一緒に、次のような工夫を身につけていただきます。

  • 酸っぱい飲み物は、食事と一緒にまとめてとる(ちびちび飲みを避ける)
  • 飲んだあとは、水で口をすすぐ
  • 飲んだ直後の歯みがきは避ける(30分〜1時間ほど待つ)
  • ストローを使って、前歯にふれる量を減らす
  • 水分をこまめにとる・鼻で呼吸する(唾液を保つ)
  • 定期的なメンテナンスで、足したところのすり減りや、新しく溶けているところを確かめる

気づいたその日が、いちばん早い日です。「もしかして」と思ったら、ご相談ください。

Price

費用の目安

項目費用備考
保険のダイレクトボンディング(コンポジットレジン)3割負担で1本2,000〜3,000円程度小さな範囲・目立たない場所の修復
自費ダイレクトボンディング 前歯1本 88,000〜110,000円(税込)前歯の先や裏側が溶けて薄くなったところを足し戻す
自費ダイレクトボンディング 小臼歯1本 66,000〜88,000円(税込)笑ったときに見える歯
自費ダイレクトボンディング 大臼歯1本 88,000〜110,000円(税込)奥歯の噛む面が平らに溶けたところ
噛み合わせの高さを戻す治療(自費ダイレクトボンディング)上の1本の費用 × 高さを戻す歯の本数溶けたりすり減ったりして低くなった噛み合わせを、何本かの歯に足して戻す

金額は目安です。歯の場所・治す範囲・素材などで変わります。初診でお口を確かめたうえで、お見積もりをお伝えします。

自費のダイレクトボンディングの主なリスク
天然の歯より着色しやすく、年月とともに変色することがあります。強い力で欠けたり外れたりすることがあります。治療後に一時的にしみることがあります。酸っぱい飲食物をとる習慣が続くと、まわりの歯がまた溶けることがあります。歯の状態によっては、詰め物・かぶせ物をご提案することがあります。

費用と治療の流れ

Doctors

担当する歯科医師

院長 遠山 大輔

院長遠山 大輔

東北大学歯学部卒。日本小児矯正研究会・日本接着歯学会 会員。子どもの矯正と、歯をなるべく削らないダイレクトボンディングが得意で、生まれつき小さい歯や歯がないところを整えながらの矯正も担当します。ダイレクトボンディングは、田代浩史 臨床教授(東京科学大学・徳島大学)が主宰し、田上順次 名誉教授(東京科学大学)も講師を務める「DRC浜松」のアドバンスコースを修了しています。

院長プロフィール
Q&A

酸蝕症について、
よくあるご質問

ワインを飲んだあと、すぐに歯をみがけばいいですか?

すぐにはみがかないでください。酸っぱいものを飲んだ直後の歯は、表面が一時的にやわらかくなっています。この状態でみがくと、表面をこすり落としてしまいます。まず水で口をすすぎ、30分〜1時間ほどたってからみがきましょう。

ワインや酸っぱいものは、やめないといけませんか?

やめる必要はありません。飲む回数やタイミング、飲んだあとのケアを少し工夫することで、歯への負担を減らせます。

酸蝕症は、年齢のせいですか?

年齢よりも、飲食の習慣が大きく関わります。同じ年齢でも、酸っぱい飲み物をよくとる方と、そうでない方では進み方が違います。「年のせい」とあきらめず、習慣の見直しから始めましょう。

セルフチェックで当てはまる項目が多かったのですが、歯医者に行ったほうがいいですか?

一度ご相談ください。酸蝕症は、進むほど治療の負担が大きくなります。早いうちなら、習慣の見直しと、溶けたところを足し戻す治療で対応できることが多いです。

知覚過敏なら、知覚過敏用の歯みがき粉で様子を見てもいいですか?

知覚過敏とわかっていれば、それも一つの方法です。ただ、ご自分で「知覚過敏」と決めると、酸蝕症や虫歯を見逃すことがあります。一度、歯科で原因を確かめてからにすると安心です。

保険で治療できますか?

保険のコンポジットレジンで治せる範囲もあります。見た目や長持ちを重視する場合は、自費のダイレクトボンディングという選択肢もあります。お口の状態を確かめてから、それぞれの良いところと気をつけることをご説明します。

ダイレクトボンディングは、どのくらいもちますか?

使い方やお手入れ、飲食の習慣によって変わります。樹脂は年月とともにわずかに変色・すり減ることがありますが、部分的にやり直せるのが利点です。原因の習慣を見直し、定期的なメンテナンスを続けることで、長く保ちやすくなります。

何本も溶けている場合は、一度に治しますか?

優先する歯から、何回かに分けて進めることもできます。噛み合わせを確かめながら、無理のない順番をご相談します。

歯が溶けて、噛み合わせが低くなった気がします。高さを戻せますか?

何本かの歯にダイレクトボンディングで樹脂を足して、噛み合わせの高さを戻す治療をしています。費用は、高さを戻す歯の本数ぶん、ダイレクトボンディング1本の費用(前歯・小臼歯・大臼歯で違います)がかかります。歯ぎしりが強い方には、寝るときのマウスピース(ナイトガード)の併用をおすすめすることがあります。

初診カウンセリング

「先生にお任せします」ではなく、
「先生と一緒に決めました」と言って帰っていただくために。

初回は治療をせず、あなたのお話を伺い、
検査の結果を一緒に見ながらご説明します。

  • 完全予約制・初回は検査とご説明(治療は2回目以降)
  • 所要時間は約45〜60分
  • 費用は3割負担で3,000〜5,000円程度
受付で親子に問診票を説明するスタッフ
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